リサイクルは、経済を回す。
「リサイクル、何のため?」
こう問われたら、皆さんは何と答えますか。
「・・・ 何となく、環境のため。」
きっと、このように答える方が多いのではないかと思います。
その通り!
分別・リサイクルは、海洋生態系に悪影響を及ぼす海洋プラスチックごみや、製造から焼却処分までの過程で出る大量の二酸化炭素を削減する、地球温暖化対策につながる重要な取組です。
ですが、実はそれだけではありません。
リサイクルは、「経済のため」でもあるのです。
リサイクルへの対応の遅れは、多大な経済損失に繋がる?
リサイクルに関して、欧州連合(EU)が驚くべき方針を発表しています。
それは、2030年ごろまでに「新車の生産に必要なプラスチックの25%以上を、再生プラスチックにするように求める」というものです。
すなわち、再生プラスチックが使用された、“環境に配慮した車”でないと、今後は売れなくなってしまうリスクがある、ということになります。
他にも、使用済製品の再活用や再生材利用が、製品メーカーの企業価値向上につながるとして、各ブランドからも再生材利用に関するコミットメントが多く発表されています。
例えば 、私もよく利用するファストファッションのH&Mでは「2030年までにリサイクルまたはその他のよりサスティナブルな素材のみを使用する」、ZARAでは「2025年までに綿・リネン・PETはオーガニック・サスティナブル・リサイクル済みに100%切り替え」という発表がされています。
また、私も毎日使用するiPhoneですが、Apple社は「2021年時点で20%以上の再生材利用を達成」しています。
これはすなわち、これらのブランドオーナーに部品や素材を供給する企業も、再生材利用に対応していかなければ、サプライチェーンから排除されるリスクがあるということになります。
このように、世界は大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから、環境と経済が統合する循環経済システムに転換しています。
リサイクルへの対応の遅れは、多大な経済損失に繋がるのです。
これら他国の取組も踏まえ、経済産業省では「製造事業者等に対し、再生材の利用義務化」の方針を示しています。(現状、製造業事業者等の再生材の利用は、一部を除いて努力義務にとどまっています。)
日本国内で、リサイクル事業環境整備を急速に進める必要が出ているのです。
全国に先駆け、リサイクルに取り組む仙台市。
2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」では、プラスチック資源の分別収集を促進するため、プラスチック容器包装に加え、これまで回収せずに家庭ごみとして焼却していた製品プラスチック(ハンガー・ストロー・フォーク・定規・おもちゃ等)も一括で回収し、リサイクルすることが可能となりました。
また、同法では、市町村が製品プラスチックを含むプラスチックごみの再商品化計画を策定し、環境大臣および経済産業大臣の認定を受けることで、自らリサイクルを行うことができる仕組みを新たに設けています。
そして、その仕組みをつかって、全国で第一号となる認定を仙台市が取得したのです。
今回は特別に、民間リサイクル事業者であるJ&T環境株式会社さんの仙台工場を訪れ、「家庭から排出されたプラスチックごみの選別からリサイクルまでを一貫して行い、リサイクル製品を製造する流れ」を取材させていただきました!
捨てられたプラスチックごみは、どのようにリサイクルされているの?
訪れたのは、J&T環境株式会社仙台工場。
ごみの選別からリサイクル製品製造までを同敷地内で一貫して行うことができる、日本でも大変珍しい工場です!
毎日、ごみ収集車40~60台分ものプラスチックごみが運ばれてきます。
これらはベルトコンベアに流され、プラスチックごみではないものが混ざっていないか、手作業で選別します。
下の写真は、プラスチックごみではないものが混入されていたため取り除かれたごみのほんの一部です。混入されたままベルトコンベアに流してしまうと、機械が破損してしまう危険性があるため、一人一人が目視で確認をしています。
正しくごみの分別をしなければ、事業者に多大なる迷惑がかかることを目の前にし、頭が下がる思いでした。
最も多かったものは、使い切っていない調味料。
電子機器などもありました。
その後、プラスチックごみは機械を通して破砕や洗浄され、リサイクル製品の原料や、ボイラー等に使用する固形燃料に生まれ変わります。
これらがどのような製品に生まれ変わるのか、見ていきましょう。
まずは、パレットです。
パレットは、物流に用いる、荷物を載せるための荷役台です。1日約1000枚、年間では約30万枚生産されます。主には、輸送業者やホームセンターなどで使用されます。(確かに、近所のホームセンターで、見た覚えがあります!
続いては、ティッシュケースです。
こちらのおしゃれなティッシュケースも、リサイクル製品となります。捨てられたプラスチックごみから作られた!なんて、言われなければまったく分かりません。
植物を植えるこのプランターも、リサイクル製品です。
小学生向けの環境教育として、「リサイクルをしたら、何ができるのかを学んでもらいたい」という想いが込められ、仙台市と共同でつくられました。
私が特に驚いたのが、上の写真のピンクのごみ袋(右)です。
こちらは、使用済みの仙台市のプラスチックごみ袋(左)を半分使用し、つくられました。町内会に渡し、地域清掃に活用してもらっています。
使用済みのごみ袋を再利用して、新しいごみ袋に生まれ変わる。まさに資源循環です。
私たちが何気なく捨てているプラスチックごみが、このような製品が生まれ変わると思うと、より正しい分別を心がけようと思えます。私たちが正しく分別を行うことで、リサイクル製品として使用できる原料が増えるのです。
まさに、プラスチックは、混ぜればごみですが、分ければ重要な資源です。
この日をきっかけに、自宅でごみを捨てるとき、いつも以上に気にかけるようになりました!
環境のためだけでなく、未来の経済のためにもリサイクル。
私自身も、まずは小さなところから、はじめてみようと思います。
文:もよさん