極寒地で50時間耐久!水素でキャンプできるのか!
水素エネルギーは、私たちの日常生活と縁遠い気がする。
白衣やスーツを着た方々が、水素製造の実証事業で大活躍しているのに。
もしかしたら、水素は、エネルギー産業の観点だけでなく、
地域の魅力発信の起爆剤としても期待できるのではないか。
もしも水素エネルギーが実用化したら!
水素が地域の魅力となりうるか、
実際に、地域で、水素で、暮らしてみることで、検証してみた。
ソロキャンプが流行っていて、災害対応の検証も兼ねるため、
「水素キャンプ」として試験実証することにした。
実際にキャンプしていただいたのは、
青森県三戸町にIターン移住し、地域の魅力を発信している
サンノヘエール 代表 五十嵐 淳さん。
火が使えない(水素ステーション内のため)ので、キャンプの王道「飯ごう」ではなく「炊飯ジャー」を準備。
青森県の10月に実施したため、暖をとる「ファンヒーター」、「ホットカーペット」も欠かせない。
五十嵐さんは、IT技術者であることから、「パソコン」でリモートワークの仕事もしていただいた。
水素キャンプ初日。
午後一で取材があるため、近くのラーメン屋で昼食をとる。
暖房をつけて仕事をするオール電化なキャンプがはじまった。
昼食の後はリモートで打合せ。
水素キャンプではパソコンが使えるのだ。
夕食は、近所のスーパーで買った牛ステーキ肉と玉ねぎを
青森県特産のにんにくと塩麹で炒めたもの。
ご飯は福島県西会津産コシヒカリ。
新米なので急速炊飯で炊く。
ここで事件発生。
深夜、雪のような雨が降ってきた。
5℃近くまで気温が下がる。
しかし、ホットカーペットが暖かく、テント内は常時24℃を維持した。
軽装で一夜が過ごせて難なくクリア。
ところで、水素エネルギーは、なにがすごいのか。
水素をエネルギー資源として見た場合、2つの特徴がある。
1.様々な資源からつくることができる
理科の実験を思い出す。
水素といえば、電気を使って水から取り出す・・・電気分解!
教科書に書いてあった記憶はないが、
実は、水素は、石油や天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、様々な資源からもつくることができる。
日本は90%以上の一次エネルギーを海外から輸入する化石燃料に頼っている。しかも特定地域への依存度が高く、国際情勢の影響を受けやすい。
海外の未利用エネルギーや豊富な再生可能エネルギーなど、安価な資源から水素をつくり、代替エネルギーとして利用することができれば・・・!
2.エネルギーとして利用してもCO2を出さない
水素は、酸素を結びつけることで発電したり、燃焼させ熱エネルギーに変えるため、水(蒸気)しか出ないから、CO2を排出しない。
化石燃料から水素をつくるときはCO2が排出されるが、CO2を地中に貯蔵する技術(海外では実用化)と組み合わせれば、CO2を抑えることができる。
生ゴミや植物などを利用した、カーボンニュートラルな資源であるバイオマスを原料にしたり、
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを使ったりして、水素をつくることができれば・・・!
パリティ価格※の実現や、成熟したシステム構築という課題はいったん棚上げし、
「水素の課題を解決」するのではなく、「地域の課題を水素で解決」できるか、水素キャンプでの検証が続く。
水素キャンプ2日目。
アウトドアを満喫したかったが、あいにくの雨のため、
三沢市の木崎野温泉の湯につかる。
街中に銭湯のように立地し、広くてお湯がよい。
昼過ぎ、ようやく雨があがる。
夕食は、カレーライスとかつおの刺身(にんにく添え)。
2日目も新米とにんにくを堪能する。
水素キャンプ3日目。
キャンプの朝ご飯は、
道具の撤収や、予約していたアクティビティのために早起きしたりと、
意外と忙しくなりがちと聞くが、
水素キャンプなので、朝も炊飯器でご飯を炊く。
FCVを燃料満タンで返却するため、
水素ステーションで水素充填して実証事業終了。
充填時間は2~3分程度。
実証事業を終えて。
ーお疲れさまでした!寒さも難なくクリアでしたね!
水素キャンプを体験しての感想をお聞かせください。
五十嵐さん:エネルギーの最終消費形態は電気でしたが、「水素エネルギーを使用している・・・!」と思うと、特別感というか、満足感を感じました。
ーたしかに、”太陽光パネルと水素製造装置、FCVが配備された水素ステーションでキャンプした”なんて、現状、「超」高級グランピング生活ですよね。
五十嵐さん:夜は気温3℃くらいまで下がる日もあって、外は寒かったんですが、水素充填が短時間で済むので助かりました。何かあっても、すぐに再エネ由来の水素エネルギーを補給できる安心感もありましたね。
ーSNSでも水素キャンプについて投稿されていましたが、周囲の反応はいかがでしたか。
五十嵐さん:それがすごく注目度が高くて。水素ってアクティビティ的な要素もあると思うんです。まさに水素Well-beingを体感させていただきました!
五十嵐さんのコメントを伺い、私も水素キャンプをやってみたくなった。
そして、水素エネルギーで生活する特別感を、
若者やベンチャー企業へ、地域ブランドや地域の魅力として使うことで、
UIJターンや企業誘致につなげる可能性を見ることができた。
今回は、短期間の試験実証という形ではあったが、
今後、水素タウンや水素ビルなどの居住エリアができたとしたら・・・!
期待は高まるばかりである。
文:ともとも
水素キャンプ実証事業に係る報告(東北経済産業局HP)
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/topics/230116.html
五十嵐 淳@サンノヘエール代表(Xプロフィール)
https://x.com/tonton1205?s=11&t=RbzAawJX6WGFBUMkKZ1fiw