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極寒地で50時間耐久!水素でキャンプできるのか!

水素エネルギーは、私たちの日常生活と縁遠い気がする。
白衣やスーツを着た方々が、水素製造の実証事業で大活躍しているのに。

もしかしたら、水素は、エネルギー産業の観点だけでなく、
地域の魅力発信の起爆剤としても期待できるのではないか。

もしも水素エネルギーが実用化したら!

水素が地域の魅力となりうるか、
実際に、地域で、水素で、暮らしてみることで、検証してみた。

三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合に全面協力いただき、水素ステーションとFCV(燃料電池自動車)をお借りしました

ソロキャンプが流行っていて、災害対応の検証も兼ねるため、
「水素キャンプ」として試験実証することにした。

実際にキャンプしていただいたのは、
青森県三戸町にIターン移住し、地域の魅力を発信している
サンノヘエール 代表 五十嵐 淳さん

パラレルワーカーとして働き、サラリーマン・個人事業主(フリーランス)・地域団体代表という3つの顔を持つ五十嵐さん。サンノヘエール代表として取り組んでいるのは、地域内外の課題を解決するためのイベント企画・運営や、人材育成・発掘。

実施場所:青森県おいらせ町(三沢市ソーラーシステムメンテナンス事業協同組合敷地内水素ステーション)
実施期間:2022年10月24日10時~2022年10月26日12時

太陽光発電からの電気により製造した電解水素を、水素ステーション経由でFCV(燃料電池自動車)に充填、FCV~専用配電盤を通して電気を使用

火が使えない(水素ステーション内のため)ので、キャンプの王道「飯ごう」ではなく「炊飯ジャー」を準備。
青森県の10月に実施したため、暖をとる「ファンヒーター」「ホットカーペット」も欠かせない。
五十嵐さんは、IT技術者であることから、「パソコン」でリモートワークの仕事もしていただいた。

水素キャンプ初日。

午後一で取材があるため、近くのラーメン屋で昼食をとる。
暖房をつけて仕事をするオール電化なキャンプがはじまった。

画像は粗いが、満面の笑みで仕事をする五十嵐さん

昼食の後はリモートで打合せ。
水素キャンプではパソコンが使えるのだ。

夕食は、近所のスーパーで買った牛ステーキ肉と玉ねぎを
青森県特産のにんにくと塩麹で炒めたもの。
ご飯は福島県西会津産コシヒカリ。
新米なので急速炊飯で炊く。

フライパンから直接いただく
お米はおいしく炊けたが、ヘラを忘れる

ここで事件発生。
深夜、雪のような雨が降ってきた。
5℃近くまで気温が下がる。

しかし、ホットカーペットが暖かく、テント内は常時24℃を維持した。
軽装で一夜が過ごせて難なくクリア。

ところで、水素エネルギーは、なにがすごいのか。

水素をエネルギー資源として見た場合、2つの特徴がある。

1.様々な資源からつくることができる

理科の実験を思い出す。
水素といえば、電気を使って水から取り出す・・・電気分解!

教科書に書いてあった記憶はないが、
実は、水素は、石油や天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、様々な資源からもつくることができる。

日本は90%以上の一次エネルギーを海外から輸入する化石燃料に頼っている。しかも特定地域への依存度が高く、国際情勢の影響を受けやすい。

海外の未利用エネルギーや豊富な再生可能エネルギーなど、安価な資源から水素をつくり、代替エネルギーとして利用することができれば・・・!

2.エネルギーとして利用してもCO2を出さない

水素は、酸素を結びつけることで発電したり、燃焼させ熱エネルギーに変えるため、水(蒸気)しか出ないから、CO2を排出しない

化石燃料から水素をつくるときはCO2が排出されるが、CO2を地中に貯蔵する技術(海外では実用化)と組み合わせれば、CO2を抑えることができる。

生ゴミや植物などを利用した、カーボンニュートラルな資源であるバイオマスを原料にしたり
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを使ったりして、水素をつくることができれば・・・!

パリティ価格※の実現や、成熟したシステム構築という課題はいったん棚上げし、
「水素の課題を解決」するのではなく、「地域の課題を水素で解決」できるか、水素キャンプでの検証が続く。

※パリティ価格:ここでは、水素エネルギーによる発電コストが、既存の電力コストと同等かそれ以下になる点(コスト)を指す

水素キャンプ2日目。

アウトドアを満喫したかったが、あいにくの雨のため、
三沢市の木崎野温泉の湯につかる。
街中に銭湯のように立地し、広くてお湯がよい。

温泉なのに洋風な建物。ロビーは一見の価値あり!

昼過ぎ、ようやく雨があがる。
夕食は、カレーライスとかつおの刺身(にんにく添え)。
2日目も新米にんにくを堪能する。

ヘラはまだない。スプーンで代用する。
夜の様子

水素キャンプ3日目。

キャンプの朝ご飯は、
道具の撤収や、予約していたアクティビティのために早起きしたりと、
意外と忙しくなりがちと聞くが、
水素キャンプなので、朝も炊飯器でご飯を炊く。

ウインナーは1パック6本入りを購入。ごはんは炊きたてなので、ヘラ代わりのスプーンが熱い。
ソロキャンプのため、スマホを吊して自撮りする五十嵐さん

FCVを燃料満タンで返却するため、
水素ステーションで水素充填して実証事業終了。
充填時間は2~3分程度

実証事業を終えて。

ーお疲れさまでした!寒さも難なくクリアでしたね!
水素キャンプを体験しての感想をお聞かせください。

五十嵐さん:エネルギーの最終消費形態は電気でしたが、「水素エネルギーを使用している・・・!」と思うと、特別感というか、満足感を感じました。

ーたしかに、”太陽光パネルと水素製造装置、FCVが配備された水素ステーションでキャンプした”なんて、現状、「超」高級グランピング生活ですよね。

五十嵐さん:夜は気温3℃くらいまで下がる日もあって、外は寒かったんですが、水素充填が短時間で済むので助かりました。何かあっても、すぐに再エネ由来の水素エネルギーを補給できる安心感もありましたね。

ーSNSでも水素キャンプについて投稿されていましたが、周囲の反応はいかがでしたか。

五十嵐さん:それがすごく注目度が高くて。水素ってアクティビティ的な要素もあると思うんです。まさに水素Well-beingを体感させていただきました!

ヘラを忘れた五十嵐さんに、(有)プラム工芸のしゃもじをプレゼント。水や汚れに強く、キレイに長く使えるのが特徴。五十嵐さんも”おしゃれなしゃもじ”と喜んでくださった。

五十嵐さんのコメントを伺い、私も水素キャンプをやってみたくなった。
そして、水素エネルギーで生活する特別感を、
若者やベンチャー企業へ、地域ブランドや地域の魅力として使うことで、
UIJターンや企業誘致につなげる可能性を見ることができた。

今回は、短期間の試験実証という形ではあったが、
今後、水素タウンや水素ビルなどの居住エリアができたとしたら・・・!
期待は高まるばかりである。

文:ともとも

水素キャンプ実証事業に係る報告(東北経済産業局HP)
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_shigen_ene/topics/230116.html

五十嵐 淳@サンノヘエール代表(Xプロフィール)

https://x.com/tonton1205?s=11&t=RbzAawJX6WGFBUMkKZ1fiw


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