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映画で広がる共感の輪~夢みる人の集いの場「シアターキネマティカ」にて~

アートの街・石巻へ

 

仙台駅から仙石東北ラインで約1時間、朝9:30過ぎに石巻駅に到着。改札では「仮面ライダー」と「サイボーグ009」のキャラクター達が出迎えてくれた。


石巻駅改札前で出迎えてくれたキャラクター達


あれ、そういえば、石巻には「石ノ森萬画館」もあるけれど、石ノ森章太郎って、NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」でも登場した登米市の出身じゃなかったっけ・・・?

ふと疑問に思い、検索してみると、石ノ森先生は少年時代、石巻の中瀬地区にあった岡田劇場という映画館に自転車で3時間もかけて頻繁に通っていたらしい。後年漫画家として花開く感性を養っていたそうだ。

 

なるほど、かつての石ノ森少年もここ石巻で映画を観ていたのね、と何だか妙な親近感を覚えつつ、改札を出る。そう、私も今日は映画を観にやってきたのだ。

 

駅から出て徒歩約10分、かつて映画館が建ち並び「文化通り」と呼ばれたその一角に、一際目立つ壁画アートをあつらえたスタイリッシュな建物が目に飛び込んできた。ここが本日の上映会場「シアターキネマティカ」である。

 


シアターキネマティカ前にて。目を引く壁画アートは、ブラジルの双子アーティスト・オスジェメオスさんがReborn-Art Festivalで石巻を訪れた際に描いてくれたのだそう。

 

会場内に入ると、映画を観に来たお客さん、運営スタッフの皆さんが入り乱れて大賑わい。主催者は、発達支援やプレーパーク・フリースクール運営等を通じて、こどもの支援に取り組まれている方々だ。

 

「大々的な広報はしませんでしたが、たくさんのお客さんが集まってくれました。それだけ皆さん、こどもの教育というテーマに関心が高いのですね」と主催者談。確かに、私が確認した時にはほぼチケットは完売、残るわずかなチケットを何とか入手したのだった(その後すぐに完売!)。


観客で賑わう場内

期待に胸を膨らませつつ席に着く。本日の上映会主催者のお一人、「生涯発達支援塾TANE」を主宰する櫻井さんからの挨拶のあと、幕が上がった。

 

上映前の挨拶をされる主催者の櫻井さん


「夢みる小学校」上映

 

本日上映されるのは「夢みる小学校」。
宿題・テスト・先生が存在せず、「プロジェクト」と呼ばれる体験学習を通じて、自分の頭で考える力を養う、「きのくに子どもの村学園」の密着ドキュメンタリーだ。このほかにも、60年間成績通知表や時間割がない「体験型総合学習」を続ける公立小学校・伊那小学校や、校則、定期テストをやめた、世田谷区立桜丘中学校も登場し、ミライの公教育・学校のあり方を考える映画だった。

 

かくいう私も3歳になったばかりの息子を抱える母親。こどもの教育は大きな関心事だ。仕事2割、プライベート8割くらいの目線でスクリーンに見入る。

 

俳優・吉岡秀隆さんの穏やかなナレーションにより、実在の小中学校で繰り広げられる驚きの日常が紹介されていく。机や椅子、遊具さえも自分たちで作り上げてしまうこども達、「体験」を教科書とした実践的な学びにこども達が目をキラキラと輝かせる姿、こどもも大人も対等なフラットな世界・・・

 

これ以上の詳細はネタバレになるので控えさせていただくが、学校ってこんなに自由で楽しくて良いんだ、と目から鱗が落ちるばかり。「うれしい衝撃」であっという間の1時間半だった。

 

<ご参考>「夢みる小学校」公式サイト

https://www.dreaming-school.com/

 

広がる共感の輪

 

上映後、シアターキネマティカ内のカフェ&ビアスタンド「City Lights」にて、本日のオススメメニューのバターチキンカレーを食べながら、主催者・他の観客の方々と映画の感想や身の上話に花が咲いた。


本日のオススメ「バターチキンカレー」。今回は、こどもも食べやすい甘口で。

 

口火を切ったのは、子連れのお母さん。実は、この「夢みる小学校」を観るのは3回目。最初の上映時にはまだ幼かったご長男が、地元の公立小学校に入学したのを機に、改めて学校教育のあり方を見つめ直すため、再度観に来られたのだそう(長男くんは、目の前のフルーツサンドに夢中でしたけれど。これがまた、とてもおいしそうだった!)。 

 

話し進めていくと、実はご自身も小学校教師をされており、お子様の育った保育園の自由な教育方針に刺激を受け、校内外でこどもの自主性を伸ばす教育を実践する様々な取組を企画・実践しているという。

 

「え~私も同じよ!」と相づちを打たれたのは、私の隣に座られていた女性。長年公立学校の教師を務められた後に退職され、現在は障害者支援の団体に勤務されている。

 

「最も自由がないのは日本の公立小中学校よね~」と現在の硬直的な教育システムを嘆きつつも、互いの活動に刺激を得て、またどこかでお会いしましょう、と約束して別れていった。


上映後の歓談の様子。カレーやフルーツサンドを食べながら。

その姿を見て「こどもも自由だけど、大人も自由なんだ」という映画内のフレーズ(ちょっと記憶は曖昧ですが)を、ふと思い出した。


恥ずかしながら、私にとって映画鑑賞は、大規模商業施設に入っている映画館で娯楽映画を観ることとイコールだった。映画を通じて課題を提起し、共感の輪を広げ、志を同じくする人がつながっていく・・・映画・芸術にはこうした力もあるのだな、と実感した。

 

夢みる人が集い、夢をかなえる場所へ

 

ちなみに、本日の上映会で冒頭挨拶をされた櫻井さんは、この上映会を自身に縁ある石巻で、しかも、「石巻に劇場を作る!という夢をかなえてしまった『シアターキネマティカ』でやりたい」という思いから、企画をスタートされたそう 。

 

そう、ここ「シアターキネマティカ」は、震災後に石巻市へUターンし、映画上映や演劇イベントのプロデュースを行っていた矢口龍太さんと阿部拓郎さんのお二人が、仕事で紹介するはずだった空き家の元布団店に一目惚れし、自ら借り上げて、念願の劇場として生まれ変わらせた場所なのだ。

 

シアターキネマティカを運営する「石巻劇場芸術協会」代表の矢口さん(左)と副代表の阿部さん(右)

「シアターキネマティカ」では、今回お邪魔した上映会のように、みんなと観たい、語り合いたいという思いを持つ方々が、毎週のように様々なイベントを開催している。

 

映画・演劇など、今後実施予定のイベントポスター・チラシが並ぶ

 

「この施設を、文化芸術を盛り上げる拠点とさせつつ、みんなとパートナーを組みながら、地域全体を盛り上げていきたい」と語る阿部さん。劇場を作るという夢をかなえた次は、隣接する元飲食店をリノベーションし、若者が飲食店や創作活動などの夢にチャレンジできる多目的スペース「ブンカボックス」を設立するプロジェクトを進行中だ。

 

この「シアターキネマティカ」を舞台に、今度はどんな夢が生まれ、街にどんな変化が生まれていくのか、これからも楽しみだ。

(文:こまち)

 

※東北経済産業局では、記事に登場した「シアターキネマティカ」のように、さまざまな担い手の共創による持続可能な地域づくりに向けた取組を推進しています。

 

NEXT TOHOKU MEETUP(東北経済産業局HP)

NEXT TOHOKU MEETUP | 東北経済産業局 (meti.go.jp)

 

事例紹介「シアターキネマティカ」

https://www.tohoku.meti.go.jp/kikaku/meetup/downloadfiles/mi_07.pdf

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