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AIにも半導体?/東北地域の半導体vol.2

前回は、どうして半導体が必要なのか
半導体を大きく3つの分類にわけて教えていただいた。
結果、半導体は、私たちの生活にとても身近なことがわかった。

引き続き、一般社団法人OpenSUSI代表理事で、株式会社AIST Solutionsプロデューサーの岡村 淳一さんに、お話を伺いたい。

ビッグデータと半導体

ーー半導体が生活の必需品であることはよくわかりました。
でも、半導体のニーズの伸びしろはあるのでしょうか。頭打ちなのでは?

岡村:そうですね。たとえば、ChatGPTは、世界中にあるウェブサイトの情報を集めて、それを学習の材料にしているわけですが、
どうやってそのビックデータを集めるのかわかりますか。

ーーえっ・・・。
便利だからよく使うのですが、考えたこともありませんでした。

岡村:基本的にバケツリレーです。
拾ったデータ(デジタル情報)をバケツリレーで受け渡すのですが、
リレーするたびに、いろんな半導体が使われます

センサー(アナログ半導体)からの情報をマイコン(デジタル半導体)で処理し、マイコンがWi-Fiの通信路を使って(Wi-Fiの交換機やスイッチはデジタル半導体の塊)、クラウドPC(デジタル半導体)に到達。クラウドPCは、ビックデータを集め、端末(PC/スマホ)からクラウドサーバーにアクセスすると、ウェブブラウザ上でデータを閲覧できる。

ーービッグデータに半導体が使われているとは、知りませんでした。

岡村:集めきれていないデータは、世界中に山ほどあります。
自動販売機の売上、道路の交通量、機械装置の稼働状態、橋梁などインフラの異常検知・・・ぱっと思いつくだけでも、たくさんあります。

ーー自動販売機の売上が遠隔でわかれば、ボトルカーで運ぶ時間もコストも削減されて便利ですね。
どれもこれも有効活用できそうなデータばかりです。

岡村:これからの時代は、ものすごい量のデータを集め、可視化したり、AIに処理させるのが常識的になります。そのためには、半導体は欠かせません。

ーーAIにも半導体が必要なんですね。

岡村:AIのほかにも、自動車の自動運転や、きれいな画像のゲームなどの需要が増加の一途ですので、今後ますます半導体の供給と技術の進化は不可欠です。

半導体設計の重要性

ーーさきほどパワー半導体のご説明(※前回)で、
「新しい半導体」が生まれていると伺いました。

岡村:そうなんです。半導体は、数を増やすだけでなく、機能の向上も求められています。

ー半導体は進化しているんですね。

岡村:AIのためのデータセンターで消費する電力は、大型の発電所1基分という大量の電力を使うと言われています。
これからは省電力な半導体チップを設計し生産する必要があります。

ーー半導体チップの設計、ですか。

岡村:Googleがスポンサー(運営会社:efabless、製造工場:SkyWater,GlobalFoundries)となり実施しているOpenMPWという取組があります。
これは、個人でも学校でも企業でも誰でも、設計した専用チップをNDA(秘密保持契約)なしに、無料で作ってもらえるというものです。

ーー半導体チップを無料で作ってもらえるんですか?

岡村:抽選に当たればという条件で、設計データを公開する必要はありますが、革新的ですよね。

ーーなぜGoogleはそんな太っ腹なことをするのでしょうか。

岡村:それはですね、OpenMPWを使用した設計者同士のコミュニティを作り、皆がGoogleが提供する設計ツールを使って、よりよい設計を生み出すためのようです。

ーークレバーですね~
でもあれ?Googleって、ソフトウェアの会社のイメージなのですが。

岡村:そこがポイントです。
実は、Googleは、自社のAIを最適化するために、TPUというGoogle 翻訳やフォト、検索、Gmail 等の Google サービスの運用を支える基盤となる専用の半導体チップを開発しました。

ーーソフトウェアの会社が、半導体チップを作ったのですか!?

岡村:日本はもちろんですが、アメリカですら設計者(ハードウェアエンジニア)が足りないんです。そして設計ツールは商用ツールしかない。
これを解決し、シリコンで新しいチャレンジをしたい、というのがGoogleの意図なのでしょう。

ーー半導体を作る企業だけが、半導体を作るものだと思っていました。

岡村:自動車会社も半導体をつくる時代です。
自動運転の技術開発にあたり、自社専用のチップやサーバーを作った方が安いという判断をします。

ーーどこもかしこも半導体ですね。

岡村:世界中でハードウェアを作る時代です。
そして今や、すべてがネットワークでつながり、ビッグデータになり、クラウドで処理するのが日常です。計算量は衰えません。

ーー今後の半導体のニーズは計り知れないですね。
岡村さん、ありがとうございました!!

「半導体」と聞くと、古い産業という印象があったが、
岡村さんの話を伺い、古いなんてとんでもない。
今も、これからも、半導体は、アツい!ことがわかった。

気になるのは、ハードウェアエンジニアが少ないため貴重ということ。
アメリカでは給料がかなり高いらしい。
急募、半導体設計者。

東北経済産業局は、岡村さんを講師にお招きし、半導体設計の基本を学ぶワークショップなどを開催します!
tizai_jigyou.pdf (meti.go.jp)

次回

ここまで、半導体の必要性と将来性について、
岡村さんに教えていただいた。
次回は、「半導体を担う地域」を紹介したい。

次回予告:「半導体は東北地域でアツい!/東北地域の半導体vol.3」

文:ともとも

半導体産業(東北経済産業局HP)
https://www.tohoku.meti.go.jp/s_monozukuri/index_semicon.html